
主人の居なくなった服
Bespoke(ビスポーク)の仕事をしていると、生活習慣などによって変化した肉のつき方、骨の出方などの変化を敏感に感じます。
前回より少し痩せたかな?筋肉がついたかな?首が曲がったかな?…
お医者さんの様に体を治すことはできないですが、洋服の形を直すことができる私の仕事。
できるだけ体に負荷がかからない様に広げたり、狭めたり、微妙に角度を変えたりして、その都度型紙を変えていきます。
私が直接会ったことがないお客様の場合は、なぜ痩せたのか、どうして細くしたいのか?など出来るだけ細かく状況を確認し、次に起こりうる事を予測して修正していきます。
一人のお客様。
何度も何度も細くして欲しいというリクエストが来ていました。初めのうちはただ痩せてしまったということだけを聞いていたのですが、痩せた原因は病によるものでした。
会うたびに痩せていき、肉付きの良かった体型は初期と比べると半分ほどのサイズになっていたようです。
お客様一人一人サイズが違う物を作っていくので、時間も労力もかかりますが、形あるものに体をはめていくのではなく、体に形をはめていくことができ、一度作って終わりではないBespoke。
ご家族から訃報の連絡が来た時、その人の人生の一部に携われたような気がして悲しさと嬉しさの入り混じる不思議な気持ちになりました。
製作期間中に亡くなられたので、残念ながらポロシャツに袖が通されることはありませんでしたが、縫製サンプルとして大切に使用させていただいています。
May he rest in peace.
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